インプラントとセラミックの違いとは?特徴やメリット、選び方や費用を解説
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歯を失ってしまった場合には、インプラントやセラミックなどの歯を補う治療方法があります。治療を検討中の方には、インプラントとセラミックの違いが分からない方もいるのではないでしょうか。
この記事ではインプラントとセラミックの違い、それぞれの特徴やメリット・デメリットなどを詳しく解説します。最後まで読んで、治療を受ける際の参考にしましょう。
この記事の監修医師
小池 陵馬 歯科医師
- 監修
広島大学歯学部卒業。日本顎咬合学会の認定医であり、日本成人矯正歯科学会・日本矯正歯科学会に所属しています。岡崎エルエル歯科・矯正歯科にて副院長の経験を経て、現在は医療法人清翔会理事長として14つの医院を経営しています。
インプラントとセラミックの違い
インプラントとセラミックは、歯を失ったり、歯の一部を欠損したケースにおいて、主に用いられる治療法です。ただし、それぞれ適している症例は異なります。
以下ではインプラントとセラミックの違いについて、特徴や治療法などを解説します。治療法を検討中の方は、インプラントとセラミックの違いを理解し、自分に適する治療法を選択しましょう。
まずはじめに、インプラントとセラミックの違いを比較してみましょう。
インプラント | セラミック | |
---|---|---|
治療法 | 歯の損失部位に人工歯を埋め込む | 歯の欠損部位に詰め物や被せ物を装着する |
適している症例 |
歯根を失っている 歯根の状態が悪い |
歯の一部が欠損している 歯根が残っている |
費用相場 | 30万〜40万円|1本 |
詰め物:約4万〜10万円 被せ物:約7万〜18万円 |
治療期間 | 3ヶ月〜1年 | 2〜4週間 |
比較してわかるように、インプラントとセラミックは治療法や適する症例が異なります。以下ではそれぞれの治療法について詳しく見ていきます。
インプラントとは?特徴・治療法
インプラントは、歯根を失うもしくは歯根の状態が悪い場合に行う治療法です。歯を失った箇所に人工歯根を埋め込み、人工の歯を装着します。インプラントの特徴は、失われた歯根を補える点にあります。
歯を失った際の治療法として、インプラントの他にはブリッジや入れ歯がありますが、歯根を補える治療法はインプラントのみです。
歯根を補うため、他の治療法と比べてしっかりと噛めて、自身の歯との違いが分からないほど自然な点が特徴です。
インプラントの構造と特徴
インプラントは人工歯根(フィクスチャー)と、支台部分(アバットメント)、人工歯の3つのパーツによって構成されています。
人工歯根を顎の骨に埋め込み、その上に人工歯を装着することでしっかりと噛むことが可能です。また、ブリッジや入れ歯のように周囲の歯に負担をかけないという特徴もあります。
インプラントの治療法
インプラント治療には外科手術が必要です。歯肉を切開し、顎の骨に穴を開け、人工歯根を埋め込み、人工の歯を取り付けます。局部麻酔をして手術するため、手術中の痛みはほとんどありません。
手術後は、埋め込んだ人工歯根が周囲の骨と結合するまでの待機期間があります。上顎の骨は柔らかいため、下の歯の治療より待機期間は長い傾向にあります。そのため、インプラント治療はすべて終えるまでに時間がかかるでしょう。
※出典:歯科インプラント治療指針 平成25年3月 日本歯科医学会編|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/shika_hoken_jouhou/dl/01-01.pdf(参照:2024年11月24日)
インプラントのメリット
失った歯を補う治療法はいくつかありますが、インプラント治療には多くのメリットがあります。
歯根を補える
インプラントは人工歯根に人工の歯を取り付ける治療法のため、歯根を補えるという大きなメリットがあります。
同じように失った歯を補う治療法として行われるブリッジは、歯根が無いため固定の際に両隣の歯を利用します。その際、両隣の歯を削りますが、インプラントにはその必要が無く、健康な歯を傷つけることもありません。
天然の歯のように噛める
噛み心地のよさもインプラントの特徴です。入れ歯はインプラントよりも固定性が劣るため、噛む力が弱くなり、食感が分かりにくいことがあります。
インプラントは歯茎に人工歯がしっかりと固定されるため、他の治療法と比べても天然の歯のような噛み応えを得られます。食感もしっかりと感じられ、違和感無く食事ができるようになるでしょう。
見た目が自然である
インプラントは人工歯の部分にセラミックやジルコニアなどの素材を使用します。
セラミックは透明感があり、歯の色を調節しやすいため、元々の歯と違いが分からないほど自然な色味です。他の治療法である入れ歯やブリッジと比べても、見た目が自然でインプラントだと気づかれないことは、大きなメリットでしょう。
虫歯にならない
インプラントは人工歯のため、虫歯にもなりません。
入れ歯は毎日洗浄する必要がありますが、インプラントは取り付けたままでいつも通りに歯磨きをしてケアができます。
ただし、歯周ポケットやインプラントに細菌が増殖し、炎症を起こす「インプラント歯周炎」になるリスクがあるため、注意しましょう。インプラント歯周炎は、初期は歯茎の腫れや赤みなどの軽い症状ですが、症状が進むと激しい炎症や痛み、さらには骨が溶けてしまう恐れがあります。再手術が必要になる場合もあるため注意が必要です。インプラントは虫歯にはなりませんが、しっかりとケアし定期的なメンテナンスが大切です。
インプラントのデメリット
自然な見た目や、噛み心地のよさを実現するインプラント治療ですが、いくつかのデメリットもあります。
費用が高い
インプラント治療は保険適用外で、全額自己負担の治療のため、費用の高さがデメリットとして挙げられます。検査や手術代などを含めると高額になることがあるでしょう。ただし、「医療費控除」の対象になるため、積極的に調べ、活用することをおすすめします。
治療の負担が大きい
インプラント手術では歯茎を切開し、顎の骨に穴を開けてインプラント体を埋め込みます。
手術中は麻酔がかかるためほとんど痛みを感じませんが、麻酔が切れた後は痛みを感じたり、歯茎の腫れたりなど負担を感じる方もいるでしょう。
また、糖尿病や高血圧症などの持病がある方は、手術に対するリスクがあるため注意が必要です。負担を考慮した上で、ご自身の既往歴や体質を確認し、医師と相談して手術を検討しましょう。
金属アレルギーを持つ人は受けられない
インプラントの人工歯根と支台部は、主に金属の一種であるチタンでできています。チタンはペースメーカーや人工関節にも使われる、生体との親和性が高い素材です。金属アレルギーを起こす可能性も低く、丈夫な素材ではありますが、人によってはアレルギー反応が出る人もいます。金属アレルギーのある人は歯科医師に事前に相談し、パッチテストを受けましょう。
セラミックとは?特徴・治療法
セラミックは、歯が欠けたり歯を失った際に、歯を補う治療法のひとつですが、インプラントとはどのような違いがあるのでしょうか。
セラミックの構造と特徴
セラミックは、残っている自分の歯に詰め物や被せ物をする治療法です。陶器と同じ素材でできており、ナチュラルな色や自然な質感を再現できることが特徴です。
詰め物や被せ物の素材には、セラミックの他にレジンやジルコニアなどがありますが、セラミックは耐久性の強さや見た目に優れています。また、オールセラミックやジルコニアセラミックなど、さまざまな種類があります。
セラミックの治療法
セラミックはインプラントのような外科手術の必要がありません。主に、虫歯や外傷によって割れたり欠損した部分を補う目的で行います。
治療法は主に2つあります。歯を大きく削った際や歯が欠けてしまった際に一本の歯全体にセラミックを被せる、「セラミッククラウン」と、欠損部位のみに詰め物をする「セラミックインレー」です。
ご自身の歯の状況やそれぞれの特徴を踏まえて、治療法を選択しましょう。
セラミックのメリット
インプラントと比較されることの多いセラミック治療ですが、治療を受けるメリットも多くあります。
審美性に優れている
セラミックもインプラントと同様に、見た目が自然で美しさに優れている点が特徴です。虫歯治療で歯に被せる素材には、セラミックの他にも銀歯などがあります。他の素材と比べてセラミックは透明感があり、歯の色も調節可能です。また、金属による歯茎の変色も防げて、より自然な見た目になるでしょう。
変色しにくい
セラミックは、表面が滑らかで変色しにくい特徴を持ちます。長い時間が経っても変色しにくく、歯石や歯垢がつきにくい点はメリットです。歯石や歯垢がつきにくいため、虫歯や歯周病のリスクを下げることが期待できます。
ただし、虫歯のリスクがゼロになるわけではなく、歯とセラミックの接着が弱まるとその隙間から虫歯菌が入り虫歯になることもあるため、日頃のケアには注意しましょう。
アレルギーを起こしにくい
セラミック最大の特徴は金属を使わない点です。そのため、金属アレルギーの人も心配なく治療を受けられます。ただし、メタルボンドを用いるセラミック治療は金属を用いるため、金属アレルギーの方は注意が必要です。
セラミックのデメリット
セラミック治療は見た目に美しく、金属アレルギーを発症しにくい利点もある一方で、デメリットもあります。
衝撃に弱い
強い力や衝撃に弱い点はセラミックのデメリットです。強い力がかかると割れることもあり、日常的に歯軋りをする方には向かないでしょう。割れてしまうことが心配な人は、ジルコニアやメタルボンドなど、強度のある素材を選ぶことも可能です。
費用が高い
セラミックは保険適用外のため、自費治療となります。さらに数年でトラブルが起きてしまうと、コストパフォーマンスが悪く感じることもあります。また、セラミックは一生綺麗な状態を保てるわけではありません。日常的にケアをしながら、定期的なメンテナンスにも費用がかかる点を考慮しておきましょう。
虫歯のリスクがある
セラミックの土台となる歯は天然歯のため、虫歯のリスクがあります。被せ物の隙間から虫歯菌が入り、虫歯になることがあるため、日頃のケアが大切です。日常のケアに加えて、定期検診に通うなどのメンテナンスも心がけましょう。
インプラントとセラミックの費用比較
インプラントとセラミックは、どちらも保険適用外で高額になる場合があります。
ここからはインプラントとセラミックの費用について解説します。
インプラントとセラミックの費用
インプラントの相場は1本30〜40万円です。ただし、歯科医院の設備や素材、症例によって費用の幅があります。
セラミックは、使用するセラミックで費用は異なりますが、一般的に詰め物で4万〜10万円、被せ物で7万〜18万円程かかります。
インプラント・セラミック共に自費診療がほとんどで費用が高額になりますが、医療費控除を受けられる可能性があるため、事前に確認しましょう。
※出典:歯の治療に伴う一般的な費用が医療費控除の対象となるかの判断|https://www.keisan.nta.go.jp/r1yokuaru/cat2/cat22/cat221/ocat324/cid106.html(参照:2024年11月24日)
インプラントとセラミックの選び方
ここまで、インプラントとセラミックの特徴や治療法について説明しました。
歯が欠けたり失われた際に、どちらの治療法が自身に合っているでしょうか。インプラントとセラミックを選ぶ際のポイントについてまとめました。
金属アレルギーの有無
インプラントとセラミックの大きな違いは、金属使用の有無です。インプラントは人工歯根と支台部に金属を使います。安全性の高い金属であるチタンを使用していますが、まれにアレルギーを発症する方もいるため、金属アレルギーのある人はインプラント治療前に医師に相談してパッチテストをしましょう。
歯根の有無
インプラント治療とセラミック治療には歯根を補うか補わないかの違いがあります。インプラントは人工歯根を埋め込むことが可能なため、歯根のない人はインプラント治療になるでしょう。対して、歯根があり歯の一部が欠損している方は、セラミック治療が選択肢となります。
前歯の状態
前歯はとくに目立つため、不自然さを無くすことが重要です。この場合、インプラントとセラミックの併用治療がすすめられています。セラミックは色を調整しやすい特徴があるため、インプラントで人工歯根を埋め込み、その上にセラミッククラウンを被せることで、より自然な見た目が可能です。
まとめ
この記事では失った歯を補う治療として用いられる、インプラントとセラミックの違いやメリット・デメリットについて詳しく解説しました。
インプラント治療とセラミック治療はそれぞれ特徴や利点があるため、どちらの治療法を選択すべきか迷っている方はこの記事を参考に医師と相談して、自身に合った治療法を選択してください。