インプラント治療の手順とは?治療の流れや期間を詳しく解説
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インプラント治療の手順は「検査・インプラント埋入・アバットメント連結・人工歯装着」の流れが一般的です。ただし外科手術の回数により「1回法」と「2回法」に分けられているほか、「骨が足りない」「歯周病が進行している」などの理由で手順が変わったり治療期間が延びたりします。この記事ではインプラント治療の基本的な手順を説明するとともに、治療期間が延びるケースなどもまとめています。
この記事の監修医師

小池 陵馬 歯科医師
- 監修
広島大学歯学部卒業。日本顎咬合学会の認定医であり、日本成人矯正歯科学会・日本矯正歯科学会に所属しています。岡崎エルエル歯科・矯正歯科にて副院長の経験を経て、現在は医療法人清翔会理事長として14つの医院を経営しています。
インプラント治療とは?


インプラント治療とは、歯を失った部分のアゴの骨に人工の歯根を埋め込み、その上に人工の歯を被せることで歯の機能を取り戻す治療方法です。
従来、歯を失った場合の治療方法は入れ歯やブリッジが主流でしたが、第3の治療方法としてインプラント治療が確立され、今では1本だけ歯を失った、上の歯を全部失ったなど様々なケースに対応できるようになってきています。歯科治療におけるインプラントは、歯根部(インプラント体)、支台部(アバットメント)、人工歯(上部構造)から成り立っています。
インプラント治療のメリット
- 自分の歯で噛んでいるような感覚を取り戻せる
- 自然な見た目に仕上がる
- メンテナンスをきちんとすれば長く使える
- 入れ歯と違い取り外してケアをする必要がない
- ブリッジと違い健康な歯を傷つけることがない
インプラント治療にはこのようなメリットがあります。特に、歯を失って食事の際などに不便さを感じていた方は、自分の歯で噛んでいるような感覚が得られるのをメリット(喜び)に感じられるのではないでしょうか。
入れ歯やブリッジは食事の際にどこか「自分の歯ではない感覚」「少し浮いているような感覚」になることがありますが、インプラントは噛み心地がまったく違うようです。
インプラント治療のデメリット
- 一部のケースを除き治療費用が高額(公的医療保険は適用されない)
- 外科手術が必要で入れ歯やブリッジと比べて身体的負担が大きい
- 入れ歯やブリッジと比べて治療期間が長い
- 歯や歯茎・骨の状態によっては適用できないことがある
- 疾患など身体の状態によっても適用できないことがある
インプラントにはこのようなデメリットがあります。一部のケースを除いて公的医療保険が適用されず費用が高額になる点は、治療をためらう原因にもなるでしょう。また外科手術が必要になるため、身体的負担も他の治療方法と比べると大きくなります。
インプラント治療の手順と流れ【2回法】


※実際の手順・流れ・期間は患者さんの状態などによって異なります。
インプラント治療は、外科手術の回数によって「1回法」と「2回法」があり、治療の流れは同じですが手順が少し異なります。まずは2回法から詳しい流れを説明します。
- カウンセリングと事前検査
- 一次手術
- 骨結合期間
- 二次手術
- 人工歯の装着
ステップ1:カウンセリングと事前検査
まずは歯科医院を受診して、インプラント治療を受けたい旨を伝えましょう。初回は無料カウンセリングを行っている歯科医院も多いですが、中には有料(初診扱い)になる歯科医院もあるため事前に確認しておくと安心です。
次に歯科用CTでアゴの骨など細部まで確認できる画像を撮影し、口腔内を詳しく検査します。検査の結果問題なくインプラントが受けられる状態だと判断されたら、具体的な治療説明に入ります。費用や期間の説明もあるはずですが、少しでも疑問に思うことがあれば遠慮なく質問しましょう。
カウンセリングと事前検査で何回通院が必要になるかは歯科医院によって異なります(インプラントを担当する歯科医師が常駐でない場合など)。インプラント治療を受けることが決まったら、契約書にサインをして次回から治療が始まります。
ステップ2:一次手術
一次手術では歯茎を切開して穴を作り、インプラント体を埋め込みます。手術時間は術式や歯科医院などによって変わりますが、概ね1本あたり15〜20分ほどが目安となるでしょう。
ただし本数や抜歯の有無、そのほか当日の口腔内の状態など様々な要因で時間が変わることもあります。外科手術なので前後の予定は入れずにおくこと、時間には余裕を持っておくことが大切です。
無事にインプラント体の埋入が済んだら、歯科医師から次の処置までの過ごし方や注意事項などの説明があります。傷口がしっかり塞がってインプラント体が定着するまで一定期間かかるため、歯科医師の説明や注意事項をよく聞いて必ず守るようにしてください。
ステップ3:骨結合期間
一次手術から数週間(目安として2週間前後)が経過したら、歯科医院を受診して抜糸し、化膿していないかなどのチェックを受けます。その後は、インプラント体がアゴの骨と結合し一体化するのを待つための、骨の結合期間に入ります。個人差はありますが概ね3〜6か月が目安になるでしょう。
なお結合期間中の食生活などに支障が出ないよう、仮歯を使用できる場合があります。インプラントの埋入箇所などによって異なる可能性があるため、仮歯を希望する方は抜糸で受診したときに聞いてみることをおすすめします。
また骨の結合期間中の通院や日常生活における注意事項については、歯科医師の説明をよく聞いて守るようにしてください。
ステップ4:二次手術
一次手術から3〜6か月が経過しインプラント体とアゴの骨が結合したら、インプラント体と、人工歯を支えるためのアバットメントを連結させます。このときに行うのが二次手術です。
再び歯茎を切開して、インプラント体とアゴの骨が問題なく結合しているかもう一度入念に調べます。問題なければアバットメントを連結させます。アバットメントはチタンやチタン合金、ジルコニアなどでできた小さな部品で、連結させたあとにビスのようなキャップをして処置は完了です(縫合することもあります)。
二次手術にかかる時間は、やはり個人差はあるものの概ね30分程度を見ておくとよいでしょう。また二次手術後に歯茎が回復するまで1〜6週間ほどかかるとされています。
ステップ5:人工歯の装着
歯茎が回復したら、いよいよ人工歯の製作に入ります。型取りをして、形や色など患者さんの希望や他の歯の色なども踏まえながら製作していきます。人工歯の製作期間は、型取りをしてから1〜2週間ほどが目安です。
人工歯が完成したら、二次手術のときにアバットメントに被せたキャップを取り外し、人工歯を取り付けて完成です。そのあとは、かみ合わせや色・形に問題がないかといったことを確認し、必要に応じて微調整することもあります。
納得がいかない場合や、かみ合わせに違和感がある、痛いなどという場合は修正してもらえるはずなので、遠慮なく(我慢せず)申し出ましょう。特にかみ合わせは重要な問題なので無理をしないことが大切です。
またインプラントは天然歯と同じようにメンテナンスが必須です。インプラントや口腔内の環境を良い状態に保つためにも、定期メンテナンスは必ず受けましょう。
インプラント治療の手順と流れ【1回法】


※実際の手順・流れ・期間は患者さんの状態などによって異なります。
1回法の流れは以下のとおりです。
- カウンセリングと事前検査
- 手術
- 骨結合期間
- 人工歯の装着
1回法では、歯茎を切開してインプラント体を埋入し、アバットメントを連結させるところまで一度の手術で済ませます。アバットメントは歯茎から少しだけ露出させ、フタ(キャップ)をした状態で骨との結合期間に入ります。
骨とインプラント体が結合したらアバットメントのフタ(キャップ)を取り外し、人工歯を装着して完成です。歯茎の切開が一度で済むため、2回法に比べると身体的負担(侵襲性)は低いでしょう。
インプラント治療の期間と費用は?


インプラント治療の期間
インプラント治療にかかる期間は概ね6か月〜1年程度です(2回法の場合)。ただし「歯周病が進行していて先に治療が必要」「アゴの骨の量や厚みが足りないため、先に骨を増やす処置が必要」などという場合は、トータルの治療期間が長くなり1年を超えることもあります。
なお、歯周病などの治療や骨を増やす処置の必要性については、カウンセリングのあとの事前検査の時点で分かるので、その際に歯科医師から説明があるはずです。
インプラント治療の費用
「先天的に顎骨が変形している」など一部の例を除き、インプラント治療は公的医療保険が適用されない自由診療です(高額医療費・限度額適用認定なども対象外)。そのため費用は歯科医院によって異なりますが、一般的には1本あたり30〜40万円あたりが相場感となるでしょう。ただし本数や人工歯の素材、骨造成治療の有無や術式(1回法・2回法)など様々な要素で変わってきます。
なお治療費用が高額になることから、分割払い(医院独自またはクレジットカード等)やデンタルローンなどに対応している歯科医院もあります。支払方法については事前に確認しておくと安心です。
まとめ


インプラント治療は検査・インプラント埋入・アバットメント連結・人工歯装着という手順で行われます。ただし1回法と2回法でやや流れが異なるほか、骨の量や厚みなどによっても全体的な流れが変わります。無料カウンセリングを実施している歯科医院も多いので、まずは一度、相談してみてはいかがでしょうか。以下のリンク先から、全国のインプラント治療に対応している歯科医院をエリアや駅で探すことができます。