初心者のためのインプラント用語集!部品・材質・検査・手術用語を解説

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インプラント治療を検討しているものの、説明に専門用語が多く、治療内容について理解しにくいと感じていませんか?治療のイメージができないと、不安もなかなか払拭されにくいのではないでしょうか。

この記事では、インプラント治療に関する部品・材質・検査・手術用語などについてわかりやすく解説します。「インプラント治療について、最低限の知識を身につけておきたい」方は、ぜひご活用ください。

この記事の監修医師

古川 雄亮 歯科医師

古川 雄亮 歯科医師

  • 監修

国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。

インプラントについて詳しい人は少ない

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JSOI(日本口腔インプラント学会)という学術団体が2015年に発表した調査結果によると、インプラントを「よく知っている」と答えた人の割合はわずか3.7%でした。多くの人がインプラントの概要や名前がわかる程度で、インプラント治療について詳しい人は非常に少ないです。

また、厚生労働省が実施した「平成28年歯科疾患実態調査」によると、インプラント埋入者の割合は、「15歳〜19歳」から「85歳以上」までどの世代でも5%以下という結果が出ています。そもそもインプラントを使用している人の割合が少ないため、詳しい人があまりいないのも仕方ないのかもしれません。

しかし、インプラント治療について全く知識がないと、歯科医師が説明する治療内容をよく理解できないまま治療を受けてしまう可能性があります。
理解しないまま進めてしまうと、自分がイメージしていたような仕上がりにならない恐れがあります。

インプラント治療に関する最低限の用語を確認していきましょう。

インプラント用語集【初心者向け】

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インプラント治療に関する用語について解説していきます。

インプラントの部品に関する用語

アバットメント

アバットメントとは、顎骨に埋め入れるインプラント体と人工歯を連結させるための小さな部品のことです。インプラント体の上にアバットメントを取り付けて、人工歯(被せ物)を連結します。チタン合金という素材が多く用いられます。

フィクスチャー

フィクスチャーとは人工歯根のことです。顎骨(がっこつ)に埋め込み、歯の根っこの役割を果たします。
フィクスチャーが顎骨としっかりくっつくことで、インプラントがグラつきません。人体と馴染みやすいチタン合金が用いられます。

インプラント体

インプラント体とはフィクスチャーの別の呼び方です。

人工歯

人工歯とは失った歯の代わりになる被せ物のことです。インプラントの上部構造ともいいます。
お口の中の見た目を良くし物をしっかりと噛む機能の役割を担います。多くの場合、人工歯はセラミックやジルコニアで製作されています。

人工歯の材質に関する用語

人工歯を作るのに用いられる材料について解説します。

オールセラミック

オールセラミックとは、セラミックのみの素材でできている被せ物のことです。
天然歯のような自然な白さや透明感を出せるのが特徴です。汚れがつきにくく、経年による変色の心配も少ないですが、強い衝撃によって割れることがあります。見た目の美しさを求める場合に適しています。

ジルコニアセラミック

ジルコニアセラミックとは、人工ダイヤモンドともよばれるほど硬い素材であるジルコニアとセラミックをかけ合わせた素材でできている被せ物のことです。
強度の強いジルコニアを審美性の高いセラミックでコーティングしており、強度と耐久性に優れて奥歯に用いるのにも適しています。

ハイブリッドセラミック

ハイブリッドセラミックとは、セラミックとプラスチックをかけ合わせた素材でできた被せ物のことです。オールセラミックやジルコニアセラミックよりも低価格である一方で、耐久性がやや劣るほか、経年による色調の変化が見られる場合があります。

インプラントの種類に関する用語

インプラントの構造は以下の2種類があります。

ワンピースタイプ

ワンピースタイプとは、インプラント体とアバットメントが一体化しているタイプのことです。アバットメントはなく、インプラント体に人工歯を装着します。1回の手術で済みますが、適応ケースが限られます。

ツーピースタイプ

ツーピースタイプとは、インプラント体・アバットメント・人工歯という3つのパーツで構成されているタイプのことです。さまざまな症例に適応できますが、2回手術が必要となる可能性があります。

インプラント体の形に関する用語

インプラント体は以下の2種類が代表的です。

スクリュータイプ

スクリュータイプとは、先端にいくほど細くなる円柱形・円錐形でネジのような形をしているインプラント体のことです。顎骨とくっつきやすいという特徴があり、現在の主流です。

シリンダータイプ

シリンダータイプとは、円筒形のシンプルな構造をしているインプラント体です。手術の際の生体への負担を抑えられますが、スクリュータイプほどの固定力はありません。

検査に関する用語

インプラント治療を行うには、治療前の精密検査が欠かせません。検査に関する用語を解説します。

デンタルレントゲン

デンタルレントゲンとは、お口の中にフィルムを入れて部分的に撮影するレントゲンのことです。特定の部位を精密に撮影したい場合に用いられます。

パノラマレントゲン

パノラマレントゲンとは、お口の中や顎全体を撮影できるレントゲンのことです。インプラント治療を行えるかどうかを診断するためにも有効な検査です。

CTスキャン

CTスキャンとは、お口の中を3D画像で表示することができる機械のことです。顎骨の厚みや密度、神経の位置などが把握でき、インプラントを正確に埋入するために欠かせない検査です。

セファログラム

セファログラムとは頭部X線規格写真とも呼ばれ、主に横顔のレントゲンを撮影するレントゲンのことです。インプラント治療より矯正治療で頻用されます。

手術に関する用語

インプラント治療では手術を必ず行います。手術に関する用語は以下のとおりです。

1回法

1回法とは、主にワンピースタイプのインプラントを用い手術が1回ですむ方法です。
顎骨にインプラント体を埋め込み、人工歯を装着する部分を歯肉の上に露出した状態で、インプラント体と顎骨がくっつくのを待ちます。顎骨と問題なくくっついたら、人工歯を装着して完了です。

2回法

2回法とは、ツーピースタイプのインプラントを用いて、2回に分けて手術を行う方法のことです。
1回目はインプラント体を埋め込み、その部分を歯肉で覆って縫合します。インプラント体と骨がくっつくのを待ち、2回目の手術で歯肉を再度切開し、インプラント体にアバットメントを連結させます。
その後、傷口が治ったら人工歯を装着して完了です。

骨造成

骨造成とはインプラント体を埋め込む顎骨の厚みが不足している場合に、自家骨(腸骨などの他の部位の骨)や人工骨を用いて骨を増やす手術方法のことです。

サイナスリフト

サイナスリフトとは、上顎洞底挙上術ともいわれる骨造成手術です。上顎の骨をたくさん増やす必要がある場合にサイナスリフト法を用います。
上顎奥歯の上部にある「上顎洞粘膜」という上顎洞の粘膜の底部を剥がして持ち上げて、できた空洞に自家骨や人工骨を入れます。

ソケットリフト

ソケットリフトも骨造成手術です。サイナスリフト法よりも増やす骨量が少ない場合(骨の高さが5mm以上ある場合)に、ソケットリフト法を用います。

GBR法

GBR法とは、インプラント体を埋め込むにあたって十分な歯槽骨がない場合に行骨誘導再生法のことです。

診療の違いや控除に関する用語

診療の違いや控除に関する用語を解説します。

保険診療

健康保険が適用され、医療費の自己負担が1~3割です。治療方法や使用する材料などが細かく定められていて、どの歯科医院でも同じ内容の治療を受けることができます。

インプラント埋入治療が公的医療保険の対象となるケースは、先天性の疾患や事故などによって顎骨の欠損がある場合などに限られています。

自由診療

治療方法や材料に制限がなく、患者さんの希望にできる限り沿った治療を受けることができます。医療費は全額自己負担です。インプラント治療は基本的に自由診療です。

医療費控除

1年間(1月1日〜12月31日)に支払った医療費が合計10万円を超える場合に利用できる所得税額控除です(年収200万円未満であれば10万円未満でも控除が適用される可能性があります)。

確定申告を行う本人だけでなく、生計をともにする配偶者や子どもなどのために支払った医療費をまとめることができます。

そもそもインプラントとは

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インプラント治療は、何らかの理由で歯を失った部分に人工歯を入れる治療方法です。顎骨にインプラント体(人工歯根)を埋め込み、人工歯を取り付けます。

インプラントは紀元前から存在し、現在に通じる治療方法は1900年代初頭に登場しました。その後、チタンと骨がくっつくことが発見され、インプラント治療は進化を続けていったのです。日本では1983年に治療が開始されました。

インプラント・入れ歯・ブリッジの違い

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歯を失った場合の選択肢は、インプラント・入れ歯・ブリッジの3つです。それぞれのメリット・デメリットを解説します。

インプラントのメリット・デメリット

インプラント治療のメリット・デメリットは以下のとおりです。

インプラントのメリット

インプラント体が顎骨に固定されるため、自分の歯と同じように噛むことができます。また、周りの歯を削る必要がありません。

インプラントのデメリット

手術が必要です。また、治療に3ヶ月〜1年程度かかるため、短期間で治療を終わらせたいという場合には適していません。そのほか、基本的に自費治療のため高額となります。

入れ歯のメリット・デメリット

入れ歯とは、失った歯の機能と見た目をプラスチックや金属で失った歯を補う取り外しのできる装置です。総入れ歯と部分入れ歯の2種類があり、歯を失った部分に装着します。

入れ歯のメリット

手術の必要がなく短期間で製作可能です。材料などにこだわらなければ、保険診療でも治療が可能です。そのほか、患者さん自身で取り外せるため、清掃性が高いです。

入れ歯のデメリット

入れ歯がズレたり外れたりすることがあり、物が挟まりやすくなる場合もあります。さらに、歯根の役割を果たす部分がないため、自分の歯のようにしっかりと噛むことは難しいです。金属の針金など見た目もよくはありません。

ブリッジのメリット・デメリット

ブリッジとは失った歯の隣の歯を削って土台にして、橋をかけるように人工歯を装着する治療方法です。

ブリッジのメリット

入れ歯よりも強く噛むことができます。公的医療保険を適用して治療が可能で、手術の必要がないため短期間で治療可能です。
白い歯にしたいなど材料によっては自費診療となります。

ブリッジのデメリット

歯を大きく削る必要があります。噛むたびに土台となる歯に負荷がかかりやすく、歯の寿命を縮めてしまうかもしれません。また、歯磨きが難しくなります。

まとめ

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JSOI(日本口腔インプラント学会)が発表した調査結果からもわかるように、インプラント治療について詳しい人は非常に少ないです。

これからインプラント治療を受けるのであれば、最低限の知識は身につけておきたいところです。

インプラント埋入治療に関する用語の意味をある程度わかっていれば、歯科医師などの説明も理解できるようになり、良い治療結果を得やすくなるでしょう。とはいえ、専門用語を全て理解するのは難しいため、わからないことは遠慮せずに歯科医師に聞くようにしてください。

インプラントネットプラス編集部

この記事の執筆者

インプラントネットプラス編集部

インプラントネットプラス編集部は、メディカルネットが運営する矯正歯科に特化した情報サイト「インプラントネットプラス」で日々配信を行っています。

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インプラントネットプラス編集部には、歯科医師・歯科衛生士が在籍しております。